山田芳裕『へうげもの』③

山田芳裕『へうげもの』20180204③.mp3 2018年2月4日読書会録音。山田芳裕『へうげもの』の最終回でございます。前回千利休が「わび」や「すき」の価値観で武家社会を動かす様に関して語りましたが、権力に食い込む千利休の様から「わび」や「すき」も一つのイデオロギーであることが分かります。そしてイデオロギーが原理主義的なものになることで、それは押し付けになってしまうということも明らかになります。 千利休を危険視した秀吉は利休に切腹を命じます。その際、介錯を命じられた織部と切腹しようとする利休とが相対するシーンは『へいげもの』の中でも名場面中の名場面です。その後の織部が自らの思想の軸を「へうげ」に据えることになる利休との最後のやり取りはぜひお聴きいただきたいです。 そして秀吉の死、関ヶ原、大阪夏冬の陣を経て、江戸幕府が開闢するまでの織部は、利休の方法論を踏襲しつつ利休とは異なった立ち位置ですきものとして武家社会の政治力学に介入して行きます。ここでも「へうげ」を軸にする織部の様が随所に垣間見れることかと思われます。 ※途中、報告者の座る椅子の軋む音が入っています。ご了承ください。

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山田芳裕『へうげもの』②

山田芳裕『へうげもの』20180204②.mp3 2018年2月4日定例読書会録音。>山田芳裕『へうげもの』の二回目です。「わび」や「すき」と言った日本独自の価値観が政治闘争を動かすテコになっているという切り口がこの戦国作品の独自性を織りなすテイストとなってますが、今回は作品内でそれがどう具体的にえがかれているのかに関して言及しております。その意味で無視できない存在が主人公・古田織部のわびすきの師匠となる千利休です。 人口に膾炙する利休像は華美な装飾をさける価値観にこだわる控え目な文化人であるかと思われますが、『へうげもの』で描かれる利休はその価値観は保持しつつも、政治闘争の渦中に漂い、利休なりの野心を果たそうとする存在です。そんな利休と武将の関係、利休と織部との関係、そして織部と武将たちの関係というものが生々しく提示されるところは非常に人間味を感じられます。また、すき者であることと武将であることとの狭間で揺れ動く織部の精神性にも注目したい部分です。 ※途中、報告者の座る椅子の軋む音が入っています。ご了承ください。

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山田芳裕『へうげもの』①

山田芳裕『へうげもの』20180204①.mp3 2018年2月4日読書会録音。今回から山田芳裕の『へうげもの』を三回に渡ってお送りいたします。戦国武将モノのお話というのはこれまで数知れずありましたが、『へうげもの』はかなり特殊な切り口で戦国の世を描く漫画作品です。武人でありながら茶や骨董などを嗜好する古田織部という人物を主人公に据えることで、この時代における権力政治の力学には文化的側面が大きく介在していたことが浮き彫りになって来ます。「戦国時代なんて大体分かる」「戦いばかりの時代で興味無い」という方にも、この作品に触れると非常に新しい戦国解釈に触れることが出来るかと思います。 初回は以前一世を風靡した「本能寺の変」というエグズプロージョンのダンスネタを導入に話を展開しております。このネタと漫画の内容自体に一切関連は無いですが、世間のマジョリティーな戦国認識が何かを今一度踏まえるためです。そしてこの一見マジョリティーに寄せているネタにも実は「深い示唆」が込められていたということに、『へうげもの』を読んでから報告者は気づきました。一体それはどういう事か?詳しくは配信内容をご聴取下さい。 ※途中、報告者の座る椅子の軋む音が入っています。ご了承ください。

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