デカルト『方法序説』①

デカルト『方法序説』 160626①.mp3 2016年6月26日定例読書会録音。今回よりデカルトの『方法序説』を四回に渡りお届け致します。近代哲学ということを考える意味では避けては通れない古典中の古典です。その所以は近代の思考の大前提となるものがこの本により提示されているからだと思います。 この本に書かれていること自体は、近代以降の時代を生きる私たちにとっては当たり前過ぎる事です。しかしその思想が生まれるまでの過程や経緯というのは非常に困難なものがあります。本文の内容自体に、今回は時代の背景やデカルト哲学が与えている影響とその問題について語っています。それ抜きにデカルトを早分かりしようとすると、実はデカルト自体の意図が掴めなくなるからです。 初回は主にデカルトの人物像に焦点をあてて話を進めております。

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オルテガ『大衆の反逆』④

オルテガ『大衆の反逆』20190526④.mp3 2019年5月26日定例読書会録音。オルテガ『大衆の反逆』の最終回でございます。大衆化=近代化の議論の流れの中でオルテガは専門分化が進む学問の在り方についても批判を展開しています。社会が複雑していく以上、科学が細分化していくことは不可避でもあるし必要なことですが、同時に専門の殻に閉じこもり全体を見通さない科学の在り方が蔓延することをオルテガは危惧した訳です。これは社会学者マックス・ウェーバーの言う「魂無き専門人」という事にも通じる問題です。よって必ずしも高度な専門性をゆうした学者が高貴な生を体現している訳ではない、ということをオルテガは主張する訳です。 「専門分化」という話を巡っては学問だけではなく私たちのフィールドでもあるお笑いでも起こっています。その話も配信中結構な時間を割いてしまいました。ここは哲学的な議論から離れてはいると思いますが、遠からず近からずの話なので出来ればスキップせずにお聴きいただけると幸いです。 また、NHKEテレの「100分de名著」でこの作品が紹介された際のオルテガ研究者・中島岳志さんの考え方を参照しつつ、オルテガの唱えた「保守主義」と現在のそれとの異同についても語っております。そして改めて「高貴な生」から大衆の在り方を凡俗だと断定するオルテガの思想に対するテラサワの私見を最後に述べております。

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オルテガ『大衆の反逆』③

オルテガ『大衆の反逆』20190526③.mp3 2019年5月26日定例読書会録音。オルテガ『大衆の反逆』の三回目となります。今回はこの本のタイトルにも含まれる「大衆」について考えます。近代以降、人権意識が芽生え階級的不自由から解放されたと同時に社会が等質化し「大衆」が出現しました。同時に、大衆が社会の物事を決定していくことに潜む危険をオルテガは指摘します。その日その日の快楽の中で自己満足する「凡俗な生」に留まる大衆は得てして過去を省み、未来を向かず時流に無批判に流されていく傾向がある訳です。そうした大衆が主となる政治社会は必然的に没落していく訳です。民主的で平等な社会は常にこの危険を孕むことを考えていたいものです。

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