和辻哲郎『風土 人間学的考察』④




2016年7月24日定例読書会録音。和辻哲郎『風土』の最終回でございます。今回は前回言及されたヨーロッパの「牧場」的風土から派生するヨーロッパ自体の抽象性を嗜好する思想の功罪、そして中国の風土とそれから派生する中国社会の精神性、そして最後に日本の多様で移ろいやすい風土から生じるつかみどころが無く時に激情的となる精神性などに関して言及をしています。今回の話の中でアニマル浜口の「気合」について少し触れてますが、この点も風土論から考えるとなかなか日本独特の特徴なのではないかと思えてきます。

しかし同時に、「風土」論がある種の文化決定論として社会の多様性自体に対し盲目的態度に陥ってしまう考え方であるというのを留意しないといけません。また、文明を語るということは近代ヨーロッパが積極的に行ってきたことですが、近代化した日本もまた思想において独自の立場を構築する事が喫緊の課題であったことも事実です。そうした複雑な背景の中で和辻は風土論に言及した訳です。風土論の陥穽を指摘するのは当然必要ですが、その責任を和辻個人に全て負わせることも違うだろうと私は考えています。

そして最後に少し言及したサイードの『オリエンタリズム』も、今回の話と並べながら考えたい本です。機会があればこちらでもご紹介したいと思います。











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